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SEIANOTE

成安で何が学べる?
どんな楽しいことがある?
在学生の制作活動から卒業後の活動までを綴る
「SEIANOTE(セイアンノート)」です

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「成安クリエイター合宿2018」レポート【後編】

REPORT

成安クリエイター合宿2018レポート

展示方法で見え方も変わる!?
作品制作から展示発表まで

「成安クリエイター合宿」って?

アートやデザインの分野でクリエイターを目指す高校生を対象にした夏合宿。2日間のプログラムを通して、作品をつくる意味やスキル、芸術で社会を生き抜くために必要なことについて学びます。

今、つくりたいものを
ありとあらゆる方法でつくる!

 盛りだくさんの初日を終え、宿泊先で朝食を済ませた参加者一行は、翌朝バスで再び成安造形大学へ。今日は「成安クリエイター合宿」最終日。昨日のワークショップをふまえて、自由に作品制作を行います。

 しかし、作品をつくるだけでは終わらないのが「成安クリエイター合宿」。どんなふうに見せるのかも、とても重要な要素です。「今日は、作品を展示するまでが完成です。例えば、高い位置に設置されると高貴な印象になったりします。作品を展示する高さや位置も考えてみてください」と、宇野君平先生(美術領域准教授)のアドバイスを受け、参加者それぞれが作品のイメージをふくらませていきます。

 制作プランが固まったところで、参加者同士で描きあったり、学生スタッフにモデルを頼んだり、はたまた、大型の作品に挑戦したりと、思い思いに散らばっていく参加者たち。

机の上で描いたり、床に広げたり、制作スタイルもそれぞれ(造形大学なので制作スペースはふんだんにあります)。

 制作スペースの片隅には、ひっそりとアーティストの画集や図録が置かれていました。つくりながら「う〜ん、どうしようかな……」と迷うのは、制作あるある。そんなときには、先生たちが「こんなやり方もあるで」と、画集を広げながらそっとアドバイスする瞬間も。

 また、「こうしたいんだけど、絵の具が乾かなくてうまくいかない……」と試行錯誤する参加者には、「それなら、この画材を使ってみたらどうかな?」と、経験豊富な学生スタッフがサポートする姿も多く見られました。

アクリルガッシュを自分好みの色に混ぜ、真っ白な紙にぶちまける! なかなか普段はできないことが体験できるのも「成安クリエイター合宿」の魅力。

 つくることに夢中になる時間は、あっという間に過ぎていきます。普段は学生たちでにぎわう「コトコト食堂」での昼食を挟むと、展示タイムに突入。制作した作品をどこに展示するのがベストかを考えながら、展示する場所や高さを参加者自身で決めていきます。

制作した作品は、自分たちで展示をしていきます。参加者21名のうち、これまで作品を展示した経験があるのはわずか4名。しかし、経験がなくても、学生スタッフや先生に相談しながら「こうしたい」「ここがいいな」の声が自然に聞こえてきます。

 展示が完了したら、タイトルと作品のテーマを用紙に記入し、発表の時間。

 初日のワークショップで、色々な素材を使った経験や、フレームの実験を行ったことから新しい挑戦をした作品もたくさん生まれていました。また、さまざまな素材を扱うことで、偶発的に面白い表現を発見した参加者の姿も多く見られました。
 すべての作品が新しい挑戦にあふれていて、全部紹介したいところなのですが……ものすごく長くなってしまうので、ここで一部の作品を紹介します。


 タイトルは《スケッチと印象》。右はモデルをスケッチしたもの、左はコラージュしたもの。本当はコラージュをベースに着色し、立体的な表現を目指していたそうですが、結果的に先生たちも「これ、カッコイイよね」「ここで何かを加えるのを止めたのもセンスを感じる」と感嘆。

 こちらは人物のコラージュで成安造形大学から見える琵琶湖の風景を表現した《好きな眺め》。ワークショップのスライドレクチャーから刺激を受け、風景を人物で表現することに挑戦した作品。

 初日のワークショップでチークを使ってクロッキーをした際、「こういう使い方もあるんだ!」と気づき、チークを使って制作した作品《きらめく 涕涙(ているい)》。

 白い紙からのぞくように足が描かれた《挑戦》。これまでは、何も描いていないまっさらな紙を破くことに抵抗があったそうですが、ワークショプでいろんな方法を見て、白い紙を思い切って破って制作したのだそう。展示にあたり、壁に穴があいているように見せるため、壁と同じ塗料を白い部分に塗布。

 “展示=白い壁に飾る”とは限りません。トレーシングペーパーを使った作品《なやみのたね》は、光が透過する窓を使って展示。ぼんやりと見える「痛い」「悲しい」の文字と、こちらに手を伸ばしている女の子の絵は、雨の日に見るとまた違った印象を受けそうです。

 限られた時間のなかでの制作、ましてやわずか1日では、イメージを100%仕上げることは困難です。ただ、作品に刻まれた制作の軌跡や、展示方法から“やりたかったこと”は、きちんと受け手に届きます。参加者の発表を終え、宇野君平先生(美術領域准教授)はこんな言葉で合宿を締めくくりました。
「みなさんが今日、発表したように、大学では自分の作品を展示してプレゼンします。そこで評価されるのは、自分がやりたかったことができているかどうかです。昨日のワークショップを経て、どの作品もチャレンジしていることが伝わってきました。この経験が少しでも、これからの制作につながるものになればと思います」。

 こうして、2日間に及んだ「成安クリエイター合宿」が終了しました。最後に、(本当は初日にやるはずだったものの、バーベキューが盛り上がりすぎて時間がなくてできなかった)スイカ割りを強行! スイカを頬張りながら、夏合宿は幕を閉じたのでした。

 ちなみに、合宿終了後に参加者に書いてもらったアンケートでは、こんな感想が挙がっていました。

「普段できない体験がたくさんできて、楽しかったし、勉強になった。先生や先輩が身近で親しみやすかった。講演会などで面白いことがあったときに、一気にみんなで笑う雰囲気が好きです」

「新しい可能性や、自分の今までとは違う制作や考え、意識が持てました」

「すべてが自分の貴重な経験になったと感じました」

「画材にはたくさん触れているつもりだったけど、画材屋に売っているものだけが画材ではないんだと感じました」

「普段使うことのない材料で絵を描くことで、いつもとまったく異なる描き方とモチーフの見方ができ、楽しかった」


取材日:2018/08/20、2018/08/21
取材・文:小西七重