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SEIANOTE

成安で何が学べる?
どんな楽しいことがある?
在学生の制作活動から卒業後の活動までを綴る
「SEIANOTE(セイアンノート)」です

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セイアンアーツアテンション14「Re:Home」レポート 前編

REPORT

【キャンパスが美術館】展覧会レポート

私たちの生活を支える「家」を多面的に考える
セイアンアーツアテンション14「Re:Home」
前編

「セイアンアーツアテンション」って何?

「芸術大学のキャンパス=美術館」という発想から、成安造形大学の回遊式美術館『キャンパスが美術館』が定期的に企画運営している総合芸術祭です。毎年、現代において注目すべきテーマを設定し、キャンパス全体を活用しながらアートやデザインの作品展示が行われ、学内を歩きまわりながら作品を楽しむことができます。
15回目を迎えるセイアンアーツアテンションは「Re:Home」。学園創立100周年記念事業の一つとして開催され、私たちの生活を支える「家」をさまざまな角度から見つめる展覧会となりました。

ミノムシと一緒に作られた
色鮮やかな「Home」



ギャラリーアートサイトに展示されたAKI INOMATAさんの作品は、ミノムシとミノ(巣)が主役となります。
入り口近くに飾られている標本画はミノムシの生態が表されており、オスはミノ蛾、メスは白い成虫となる成長の過程が描かれています。
ブランド服のお店のように美しく飾られた写真や洋服、花瓶に生けられた抜け殻のミノ。それらと向かい合わせるように置かれた鏡に映るミノは、まるで試着した洋服を確認する女性のようにも見えます。また、映像作品の中には、実際にミノムシがペレットの中で小さな布を寄せ集め、ミノを作る様子も上映されていました。
自ら吐き出した糸でハギレを重ね合わせミノを作るミノムシの姿は、おしゃれをする女性のような愛らしさも感じられました。

「故郷=家」の自然や
信仰をモチーフに描かれる抽象絵画



ギャラリーキューブに作品を展示するのは、故郷である三重県伊賀市島ヶ原で活動をする岩名泰岳(洋画クラス卒業生)さん。
ご自身が描く絵画作品だけでなく、絵画の基となるエピソードや島ヶ原で発見された絵ハガキや文章など、さまざまな資料が展示されていました。
また、ギャラリーの奥には、2013年に地元の方と結成した芸術集団<蜜ノ木>の最初の看板がありました。これと同じような形をした看板がギャラリーの外にも5枚展示されていました。しかし、ギャラリー内に展示された看板とは制作者が違い、この5枚の看板は、新たな移住者や外部の関係者がこの展覧会のために新しく制作したものでした。
時間とともに関わる人々も移り変わり、変化してゆくコミュニティの中で、さまざまな出来事があったことを想像できます。

母と娘の関係や
住宅の一部から垣間見る「Home」



開放感あるライトギャラリーには、2名の作家さんの作品が展示されました。
入口すぐは、松井沙都子さん。壁・床・光を組み合わせ、住まいのイメージを浮かび上がらせるインスタレーション作品です。
松井さんの作品には、住宅によく使われる材料の中でも、比較的安く、大量に作られ、全国的に使われている材料が使用されています。大きな作品ですが、実際に近くで見ると壁紙もカーペットもどこか見覚えがあるものばかり。例えそれが自分の家で使われていなかったとしても、誰かの家やどこかの施設で使われていた思い出と重なり、どこか懐かしさのようなものを感じられるはずです。作品は室内の一部が切り取られたものですが、観る人が空間やさまざまな風景を想像できるように制作されているそうです。



同じギャラリーの奥には、ふなだかよ(ファイバーアートクラス卒業生)さんの写真作品が見られました。
正面に展示された右側2枚の写真は、母親からの愛情を料理に例え、お皿からこぼれ落ちるほどでないと不安だった作者の心理が表現されています。左側2枚の写真は、母親が大切に育てた満開の花を全て切り、生け花にしたもの。「娘の為なら…」と大切なものを差し出す母親の本心は本人にしかわかりませんが、美しい花には愛情の美しさと切なさが映し出されているのかもしれません。
また、奥の壁面には、ふなださん自身が母親となり、生まれてきた娘が成長して使わなくなったアイテムを落下させて撮影された写真。よく見ると哺乳瓶などのカタチが見えてきます。成長の喜びとともに、失われていくことや忘れてゆく喪失感を表現しているそうです。

ギャラリー全体を見渡すと、とても広い「家」の壁に美しい写真が飾られているかのようにも感じます。しかし、作品の意図をくみとると、表面的な美しさとは正反対の生々しくてリアルな人間の感情や生活も見えてきて、この空間自体が現代の「家」のようにも感じられます。太陽が傾く頃、ギャラリーへと差し込む光が作品を照らし、より一層、不思議な感覚を覚えました。

後半へつづく